Quantcast
Channel: 探索・採集・飼育みたいな雑記的記録
Viewing all articles
Browse latest Browse all 855

沢登りを一人で珍を得る。

$
0
0

今回の目的は「ヒダカチビゴミムシ」
日高山脈の高山に生息する珍なるゴミムシで、今シーズンの目標のひとつでもある。
その姿を拝むためには登山が必須。これが私の探索史上最も過酷であろう探索となった。
これを記事にするとさぞかし面白い内容になる事、山の如しなんだが、探索中の写真が一切ない。
カメラを忘れたわけではない。
いろいろあって登山口に辿り着いたときは疲労困憊であったことと、この後、上級者向けといわれる沢登りで山頂を目指したことで、体力的に写真を写す余裕が全くなかった。
今思えば、滅多に見ることのできない生き物の生態や生息環境の記録が残せる機会であったのに後悔している。
それにしてもあの沢登りはホント過酷&無謀だった・・・
(沢登りについては割愛)

とりあえず、雪渓のある場所までひたすら登り、標高1000~1500m辺りで探索した。
雪渓脇の石をはぐると、メクラチビゴミムシの一種(※以降トレキ)がわらわら出てくる。
トレキ環境より日当たりの良い石の下ではルリマルクビゴミムシ(日高山脈亜種)が、ガレ場ではエゾガロアムシが、トレキ同様多数出てくる。夢のような環境だ。
石をはぐっただけでトレキが複数出てくるなんて、なんて素晴らしい!
しかし、ヒダカチビゴミムシであろう個体は出てこない。
トレキよりやや体色が濃く、上翅に丸みのある「怪しい個体」はいくつか出てきたが、この標高にはまだヒダカチビゴミムシは生息していないだろう。おそらくトレキの変異であろう程度に思っていた。


<採集したトレキと怪しい個体>
目視では差が曖昧で明確に区別できなかった。
一応、「怪しい個体」をいくつかキープしつつ標高を上げていったが、結局確信のある個体が出てこず、体力も限界であったため諦めて下山した。

車まで戻るのに更に体力消耗。
その後アラメオオルリオサムシを狙ったPT回収のため長距離移動してからの帰宅。(結果は先日の記事にて)

帰宅し、「怪しい個体」を拡大して確認すると、トレキにはない複眼があった。
ん?おいおい、これがヒダカチビゴミムシかよ・・・
珍種を得て嬉しい自分と区別できなかった情けない自分。
怪しんでキープしておいてよかった。


「怪しい個体」改めヒダカチビゴミムシ Masuzoa notabilis notabilis
体長は約4.5mm 複眼が確認できる。
この産地の個体数は少なくないようで、不本意ながら(?)というか運がいい事に合計6個体得ることができた。
森林限界以上の高山帯に生息すると思っていたが、雪渓があれば1000m付近にも生息しているようだ。
雪渓が消えるといなくなるらしい。


左:メクラチビゴミムシの一種 Trechiama sp.  
右:ヒダカチビゴミムシ Masuzoa notabilis notabilis
見ての通り、2種の体長、形態、体色は酷似している。
ややヒダカチビゴミムシの方が体色が濃く、上翅が丸みを帯びる。
動きはヒダカチビゴミムシの方が機敏に感じた。
この2種が石の下に複数潜んでいて、動き回っていたら、さすがに区別困難だろう。

事前に資料を確認し、ヒダカチビゴミムシの特徴は把握しているつもりだったので、トレキとは簡単に区別がつくものだと過信していた。(当初ヒダカチビゴミムシのイメージとして、もう少し上翅の丸みが強く、膨らみがあるのだろうと思っていた。)
やはり「百聞は一見にしかず」ということか。
もう学習したので、今なら2種の区別は現地でも自信を持ってできる。(かな?)

最後に。
安易な気持ちで単独の沢登りは無謀。
興味のある方は、自己責任かつ遭難する覚悟で挑戦して頂きたい。
わたしは疲れが癒えるまで、しばらくは体に優しい探索をします。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 855

Trending Articles