遅い盆休み2日間
初日は実家のある旭川へ行って、墓参りと母親の買い物の付添い。
実家の庭にあるアケビ
毎年、アケビコノハが発生するので、実家に帰るとまずこれを確認するのが楽しみ。
幼虫の食痕は至る所に確認できたが、見つけたのはこの若齢幼虫のみだった。
アケビ付近には羽化して間もないと思われる蛹の抜け殻がちらほら・・・
ということは近くに成虫が潜んでいるはず。
早速、棒でアケビをポンポン叩いてみると・・・
アケビコノハ成虫
3〜4個体の成虫がぱたぱたと飛び出してきた。
大型の蛾なので、いきなり飛び出てくると驚いてしまう。
地面に落ちると、上翅が落ち葉のようになり、見分けが困難となる。
見事な擬態。
色や形だけでなく、葉脈までしっかりと表現され、擬態の完成度は高い。
隣のおばさんが、カメラを持っているわたしを見て「庭の花を撮影してるの?」と聞いてきたので、ためらいもなく「ハイ!」と答えた。しかも自信を持って。
「でっかい蛾を撮影しているんですよ」なんて世間体を気にするわたしはとても言えませんよ。(笑)
遅い盆休み
大雨後の亜高山帯
石狩山地(大雪山)の亜高山帯(標高1300〜1400m)での探索。
もう少し標高を上げれば高山帯になる。
本当は高山帯で探索したいところだが、特別保護地区となるので、指をくわえることしかできない。
先日の大雨でかなりの増水があったらしく、沢付近の環境も荒れた状態であった。
それでもエゾガロアムシはたくさん確認することができたが、他の生物に関しては以前訪れた時に比べてかなり減っていた。
ダイセツヌレチゴミムシ Minypatrobus darlingtoni
和名に大雪山由来の「ダイセツ」とあるが、北見山地や夕張山地でも個体数は少ないが確認している。
さすがにここは本場であるので、個体数がやたら多く、沢脇の石の下からはかなりの確率で出てくる。(それでも以前の探索より少ない)
撮影した沢脇は薄暗く、撮影がうまくいかない。
フラッシュを使用するのは好きではないが、使用しても撮影技術が乏しいのでこんな感じになってしまう・・・
キソヤマゾウムシ Byrsopages kiso
高地に生息するゾウムシの一種。体長は9〜10mm
沢脇に落ちていた朽木下で発見。
じめじめした地面にゾウムシとは意外であった。
見たことのない種だったので、一応調べてみようと持ち帰ったのは正解だった。
側面
北海道では陳腐種であるハナウドゾウムシにやや似ているが、本種は上翅の点刻がハナウドゾウムシより小さく、点刻列はきれいに均等に並ぶ。
また微毛があるなどの特徴がある。
斑紋もあるようだが、擦れてほとんど確認できなかった。
※ 記事を15日と17日に分離しました。
土場探索もそろそろ終盤
亜高山探索の際、土場を見つけた。
時間も余っていたので、何か珍なものが見つかるかもと探してみることにした。
時期がやや遅めなのであまり期待はできないが。
土場には針葉樹と広葉樹があり、伐採されて新しい。
まずは針葉樹。
シラフヨツボシヒゲナガカミキリ Monochamus urussovii
お腹が一杯になるくらい、わらわら集まっており、他の種を探すのに邪魔な存在であった。
北海道固有種であるが、珍しい種ではない。
写真の個体は産卵中の♀で、上翅の白色斑紋がほとんどないタイプ。一見ヒゲナガカミキリに似ているが、正真正銘シラフヨツボシヒゲナガカミキリ。
ヒメシラフヒゲナガカミキリ Monochamus sutor
こちらも北方系のカミキリで、主に大雪山系から東に分布する。
シラフヨツボシヒゲナガカミキリに似ているが、本種は小型なので区別は容易。
シラフヨツボシヒゲナガカミキリほどではないが、多く確認できた。
写真の個体は♀
あとはカラフトモモブトカミキリが少々・・・
結局カミキリは3種のみ。
まさかこんなに種が少ないとは。やはり時期が遅いか。
クロタマムシ Buprestis haemorrhoidalis japanensis
右から2番目と左端の個体は雄。
気温も高くなってきた正午頃からタマムシ類が集まるようになってきた。
それほど俊敏に飛翔しないタマムシなので、慎重に近づけば手づかみ可能。
カクムネムツボシタマムシ Chrycobothris chrysostigma yezostigma
北方系のタマムシ。写真の右から2番目の個体のみ雌。
こやつは警戒心が強く、俊敏に飛翔するので慎重に近づいても手づかみは困難。
ただ、手を近づけると逃げるのに、網を近づけても逃げないし、網をかぶせても逃げない。
なので、網をかぶせてから、網の上から手づかみするのが失敗の少ない採集方法。
(ちなみにわたしの網は白色なので、この場合、色は関係ないらしい)
これらのタマムシ類はコンスタントに飛来してくるので、待っていれば多くの個体を採集できそうな感じだったが、土場という狭い範囲をぐるぐる徘徊していると徐々に飽きてきて、集中力も欠けてくる。(珍種がたまにやって来るなら話は別だが・・・)
このまま炎天下の探索を続けて熱中症になるのも損なので、程々にして切り上げることにした。
ちなみに広葉樹土場はハンノアオカミキリ1個体という驚くほど残念な結果。
期待し過ぎると裏切られるのはよくある事
亜高山帯の沢脇の斜面。(先日、謎の無翅ハエを見つけた場所)
礫層を掘れば、エゾガロアムシやキタツヤシデムシ、ルリマルクビゴミムシなどが出てくる場所にて、小型甲虫が出てきた。
場所が薄暗いので、よく分からなかったが、おそらく未見。
とても珍な北方系&高山種だろうと、期待し持ち帰って調べてみることにした。
拡大して観察すると・・・
タマキノコムシの一種
体長:約3mm
特徴からおそらくLeiodes sp.
和名などの詳細は不明。保育社の原色日本甲虫図鑑によると、Leiodes属の既知種は7種あるらしい。
後腿節末端に突起があり(矢印部)、後脛節は内側に湾曲している。
あれ?いつの間にか上翅に凹みが・・・
どうやらカメラを近づけすぎて、レンズに触れてしまったらしい。
小さな生き物を夢中に撮影していると、よくあることです。
それにしてもキノコや朽木、落ち葉下などで見られるタマキノコムシ類が、なぜ沢脇斜面の礫層下から出てきたのは謎。
1個体しか見つからなかったことを考えると、先日の増水で流されて、この場所に偶然辿り着いたのだろう。
実に紛らわしいことをして下さりましたよ。
高地で見つけたからと言って、なんでも北方系&高山種と思ったら大間違い。
でも珍種の可能性はあったり、なかったり・・・?
宇宙人的昆虫
昆虫の顔というのは、種それぞれ。
拡大して見ると、なかなか面白いもので、滑稽な顔あり、イケメンあり、ブサイクあり、優しい顔や怖い顔・・・などなど。
ミヤマメダカゴミムシ Notiophilus impressifrons
標高1000m付近の高山にて石の下から見つけた。
高標高の発見で、体長も5mmほどであったため、本種よりも小型のヒメミヤマメダカゴミムシかと思ったが、詳しく調べてみると上唇前縁に切れ込みがあり、肢も黄褐色だったため、ミヤマメダカゴミムシと同定。
大きな複眼が突出しているため特異な体型、銅色の金属光沢。
拡大して見ると、なかなかいい虫ではありませんか。
上から見ると、大きな目からカワイイ感もあるこの甲虫。
正面から顔を見てみると・・・
ハンミョウ類を頭部正面から見ると悪魔のような顔つきであるが、本種は宇宙人のような顔つきだ。
宇宙人と言っても友好的な性格ではなく、この顔は人間を狩ったり拉致して解剖とかしまくる凶悪で残忍な性格の宇宙人顔である。((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
とは言え、我々が昆虫採集して、毒瓶に突っ込み標本にしたり、交尾器などの器官を確認するため解剖することは、虫達にとって凶悪残忍宇宙人の行為となんら変わりないだろう。
自分のしている行為に「はっ!」とさせられた瞬間。残忍と言われても反論できまい。
ちなみにわたしは悪魔も宇宙人も実際に見たことはありませんが・・・
長期不在の代償
身内に不幸があり、10日ほど実家のある旭川へ。
ここまで自宅を空けたことは事はない。
も〜にゃ(飼いネコ)は面倒を見てくれる人がいるので安心だが、問題はその他の飼育生物群。
「エゾガロアムシ」「カタツムリ類」「サンショウウオ」
我が家の「飼育生物3種の神器」であるこれらは他の人には頼めないし、任せられない。
給餌に関しては与えなくとも10日くらいなら耐えれる方々だが、乾燥には極めて弱い。
生態観察中なので、ここで途絶えると、またサンプル確保しなければいけない。
元の木阿弥だけは避けたい。
この10日間はそんなことを考える余裕すらなかったが、帰宅の道中、無性に心配になった。
帰宅して直ぐ、着替えや片付けは後回しで飼育生物の確認。
「サンショウウオとカタツムリの飼育槽群」
夏場は自宅で一番涼しいトイレに避難させている。
サンショウウオ飼育槽×3は、水量が減って、あと数日空けていたら危険な飼育槽もあったが、完全には干上がっておらず、全個体元気だったので一安心。
カタツムリ飼育槽×4は、どれも密封にしてあるので、乾燥はしていなかった。
しかし、外出前に回収したはずだった餌(野菜)に一部回収し忘れがあって、それが腐敗して酷い状態になっていた。
カタツムリもたまらず上蓋付近に避難していたが、最悪の場合、になっていた可能性がある。
今回の事態を想定して、カタツムリの餌だけは回収して出掛けようと決めていたのだが・・・
このことからも慌ただしく自宅を出発したのがうかがえる。
「冷蔵庫内のエゾガロアムシ飼育槽群」
繊細で環境の変化に弱いので一番心配。というか普段から心配。
容器はタッパーを使用しており、密封されているが、完全ではない。
特に冷蔵庫内は乾燥しているので、容器内は徐々に乾燥していく。
帰宅後、確認したが、少々乾燥しているだけで、飼育個体には異常がなかった。
変化と言えば、終齢幼虫が亜成虫(♂)に脱皮したくらいか。
この10日間は気温が随分と下がり、写真から分かるように冷蔵庫内も約8℃と低めになっていたので、+5℃くらいの調整が必要だろう。
意外だったのが、心配していなかったキタツヤシデムシがになっていた事。
それがこの個体。
シデムシだから丈夫だと思ったが・・・
キタツヤシデムシについては複数採集して産卵〜羽化までの観察を計画していたが、1個体しか採集できず、計画が頓挫していた。
今後、法事や各手続きのため慌ただしい日々が続くと思われ、落ち着くまでは今までのような探索はできなくなる。
回数も激減し、今年はできても残り2〜3回か。
いろいろな意味で悲しい今日この頃。
交流のある方々からメールなどで探索成果を教えて頂くことが唯一の楽しみであります。
ちなみに札幌に大雨特別警報が出た日は旭川にいたため「対岸の火事」状態でした。
自宅はちょっと高台に位置するので浸水や避難区域にならなかったが、停電になったらしい。
ブヨとかブヨとかブヨとか・・・
当ブログを開設して3000日になったらしい。
8年ちょっとかぁ・・・よく続いていると感心する。
というか、いつまで続けるんだろうと思ったり・・・
gooブログは、たまにアクセス解析をおためしで使えることがあって、どのような検索キーワードで当ブログに辿り着いたのか気になって確認することがあるのだが、ほとんどの上位が「ブヨ」だ。
確かに探索記もあるので必然とブヨやマダニなどがよく出てくるのだが、ブヨがメインテーマになったことは一度もない。今後もメインテーマにすることはないだろう。
他に「サンショウウオ」「ニホンザリガニ」「オオルリオサムシ」といったキーワードも多いが、ガロアムシ情報が多いブログなのに「ガロアムシ」というキーワードで検索した形跡はほとんどない。
アクセス解析は、どれだけガロアムシに興味を持った人がいないのか再認識できる機能だと思った。
ただ、この結果で悲しいとは思わない。逆にガロアムシは自分の独壇場であるのではないかとニンマリ(自己満足)してしまうのであった。
それにしても、季節を問わずブヨに興味がある人が多い理由を知りたい。
(今回の記事でブヨを連呼しているので、またヒット率上がるんだろうな・・・)
撮影機能がある実体顕微鏡が欲しいです。(倍率は10〜40倍くらいがベスト)
先日、誕生日だったので誰かください。(笑)
USBカメラって、本体の顕微鏡より高価って一体・・・
あったら格段に観察効率が上がるので、思い切って購入しちゃおうかな・・・
というわけで先日、誕生日だったので誰かお金ください。(おいおい)
ハゲると魅力値が低下するのは人も同じ
以前、苦労して採集したアケボノマイマイ。
しっかりと撮影しようと思っていたが、2ヶ月も経ってしまった。
それには理由があって・・・
成貝(色帯型)
なぜ、撮影をしぶっていたかというと、この成貝の殻は擦れが激しく、色帯も不明瞭。
肝心の特徴(?)である毛もほとんど失ってしまい、被写体として魅力に欠けるからである。
しかもこの個体、警戒心が強く、なかなか人前では本体(軟体部分)を出さないので、撮影できる状態になるまでかなり待たされる。
この魅力的でない個体の撮影のために忍耐を強いられることは、気の短いわたしにとって苦痛のなにものでもない。
待っている間に探索へ行ける・・・んなわけない。
でも擦れた個体って、今まで色々な困難を乗り越えて生き抜いてきた証しでもあったりするので、一概に否定はできないけど・・・
幼貝(褐色・無帯型)
殻の大きさと色彩からアポイマイマイに似ているので、誤って混じってしまったら大変な事になる。
採集時から比べると巻きが増え、大きく成長した。→採集時の記事
ね?大きくなったでしょ?
成貝になるにはまだ時間が掛かりそうだが、今のところ毛もしっかり残っている完品状態なので、今後が楽しみ。
警戒心も強くないので良い子である。
幼貝(白色・無帯型)
もう少し成長したら成貝になる大きさ。
こちらも完品で、警戒心も強くない。この子も良い子だ。
カタツムリも同種であっても、単純な部分で性格はそれぞれ。
育った環境というか経験によって変わってくる。
特に若い個体は経験が少ないために警戒心が低いのだろう。
実も幼虫も熟してます。
実家の庭にて。
ひと月前はまだ緑色であったアケビの実もすっかり淡紫色に。
熟しても、うちは食べる習慣がないので収穫せずにそのまま放置。
昔、祖母が植えたと思われるが、理由は分からない。
その代わりと言ったらなんだが、アケビコノハが毎年このアケビで命を繋いでいる。
帰省する度、アケビの実の成長とアケビコノハの幼虫の成長が楽しみとなっている。
この観察は小学生の夏休み自由研究の題材に最適だろう。
アケビコノハの存在に気付いたのは4〜5年前。いつからうちのアケビで繁殖するようになったのだろうか・・・
よくうちの庭のアケビを見つけたものだと感心する。
今回はこの個体のみ見つけた。
アケビの害虫だが、ここでは駆除せず保護しているので、彼らにとって天国だろう。
いずれ恩返ししてもらう予定だ。
大きさから終齢だろう。(ちなみに頭部は左側です)
ぷにぷに感はあるが、威嚇ポーズをとっているので、やや硬直している。
成虫で越冬する蛾ではあるが、早く蛹になって羽化しないと、今年は冬が早くやって来そうなので、ちょっと心配。
次に実家に行く頃には蛹になっているかなぁ・・・
落ち卵拾い
1ヶ月ぶりの探索。
今回はヒメウスバシロチョウの卵を探し出すことが目的。
春には幼虫の食草であるエゾエンゴサクが一面に咲く場所であるが、夏以降はイタドリやイラクサなどの下草に覆われてしまう。
ウスバシロチョウが枯れ枝や石に産卵するという事なので、本種も同様だろうと、手当たり次第落ちている枯れ枝を物色するも全く見つからず。
春に幼虫を見つけている場所なので、どこかに卵はあるはずなのだが・・・
食草や食樹というような決まった場所に産卵する種ではないので、地域一帯が産卵ポイントとなってしまう。
産卵クセが分かれば少しは楽なのだが、これは厳しい。
隠して産卵する種でもないので、楽観視していた。
結局、見つかったのは、寄生蜂(?)にやられてしまった卵と・・・
(枯れ草に産卵されていた。)
石に付いていた既にになった卵のみ。
どちらも産卵位置から本種のもので間違いないと思われるが、卵の状態が悪いので納得いかない。
この場所には絶対にあるはずなので、時間があればもう一度挑戦してみたいと思うが、イタドリの枯れ茎に産卵していたら、探し出すのに相当苦労しそうだ。
イタドリが生えていない新たな場所で探すか、迷うところ。
おまけ
林床の湿った枯れ木に何やら白いものが付着していた。
ヨーグルト?
拡大すると雫のような丸い物体がびっしり。
さすがに気持ち悪く感じた。
粘菌の一種だろうか。
眉の魅力
秋です。寒いです。眠いです。
マユタテアカネ Sympetrum eroticum eroticum
北海道ではアキアカネ、ノシメトンボに次いで普通に見られるトンボ。
額に眉状斑紋があるのが特徴で、和名の由来となっている。
なぜこの陳腐なトンボを撮影したのかと言うと、先日亡くなった父が本種の撮影をしたいという事で近くの池に連れて行く約束をしていたからである。
これは叶う事ができなかったが、先日、母と一緒に父と行くはずであった池に行って、ピクニックがてら本種を撮影してきた。(喪中ですが・・・)
もちろん、父はわたしのような記録的、図鑑的な撮影はせず、いろいろと工夫して芸術的に撮影する人なので、このような単純な撮影は絶対しないはず。
この特徴である眉状斑紋をどう撮影したかったのかはもう分からない。
それにしてもこの斑紋、鼻にしか見えない・・・
気がつくと晩夏を満喫せず秋に突入していた。
バタバタしているので1ヶ月経つのが異様に早い。
エゾガロアムシの成虫になる過程・改
前回、エゾガロアムシの終齢から成虫になるまでの過程についての記事を記載したが、訂正箇所が出てきたので、改めて書き記すことにした。(前回の記事は削除済み)
わたし個人の飼育による結果をまとめております。
過程は他の昆虫と比べて特殊。
左:亜成虫♀ 右:新成虫♀
終齢幼虫が脱皮して亜成虫(※1)となる。
亜成虫は幼虫同様、白色であるが、将来雌となる幼虫には見られなかった産卵器がここで初めて現れる。
(キリギリスやコオロギとは異なる過程)
野外では夏から秋にかけて亜成虫を見かける頻度が高くなる。
幼虫のように頻繁に動き回らず、一ヶ所(狭い空間)で落ち着いている事が多いため、捕食することは少ないと思われる。(飼育下では給餌すると食べる)
各齢幼虫期間(脱皮してから次の脱皮までの期間)が少なくとも6ヶ月であるのに対して、亜成虫は約1ヶ月ほどで更に脱皮し、新成虫となる。
一ヶ所(狭い空間)で落ち着いている事が多い理由は、亜成虫期間が短いため、既に脱皮待機中ではないかと思われる。
上:亜成虫♀ 下:新成虫♀
脱皮したての新成虫はまだ体色が薄いが、徐々に濃くなり、数日後には飴色となる。
上:亜成虫♀ 下:新成虫♀
亜成虫の産卵器は短く柔らかい。
新成虫になると、産卵器は更に発達し、先端が尖る。
亜成虫から新成虫になったときの脱皮殻(矢印は産卵器部分)
実はこの脱皮事実を証明するのに時間が掛かった。
脱皮後に殻を食べてしまうのか、飼育環境が多湿なため殻が短時間で溶けて崩れてしまうのか、完全な脱皮殻を得られることが難しいのである。
本当は毎日観察して脱皮の有無を確認したいところではあるが、ストレスを与えすぎると脱皮せずに死ぬ個体も多く、頻繁に観察することはなるべく避けたい。
今回は脱皮しそうな亜成虫数個体を2~3日おきに観察し、なんとか状態の良い脱皮殻を得ることができた。
ただ一部の新成虫は観察タイミングが悪く、脱皮不全にしてしまったが・・・(想定内)
※1 以下の理由からこのステージを亜成虫として扱っております。(個人的に)
・ 幼虫には見られない産卵器がここで初めて現れる。(雌のみ)
・ 各齢幼虫期間(脱皮してから次の脱皮までの期間)が少なくとも6ヶ月であるのに対して、亜成虫~新成虫までの期間は約1ヶ月とかなり短い。
・ 幼虫のように頻繁に動き回らず、一ヶ所(狭い空間)に留まっている事が多い。
あくまでも推定だが、完全変態の蛹に当たるステージなのか、カゲロウのような「幼虫→亜成虫→成虫」という半変態といった過程なのかもしれない。
珍虫の中の珍虫in札幌
今回は札幌に生息する珍虫「ムイネチビゴミムシ」を探してみた。
札幌市のある限られた地域のみ生息(※1)している地中性ゴミムシで、北海道RDBで希少種に指定されている。
生息数・生息環境から、おそらく札幌で確認できる昆虫の中でトップクラスの珍度を誇るだろう。
採集すると1個体あたり「はぐれメ○ル」級の経験値が入るとか・・・?
この採集困難な珍虫を数年前から晩秋に1回、「探索納め」として、毎回1つの沢に絞り、遡上しながら探しているが、見事に撃沈し続けている。
生息していそうな環境さえ見つけられない手強い地域で、まともに掘れていないのが現状。
毎回全く手応えがない探索だったので、肉体的にも精神的にも疲労が半端ない。
今シーズンは珍しく2回目の挑戦で、1回目の沢は源流部まで遡上したが、生息環境をほとんど見つけることができず。(想定内)
なので、今回も半分期待せずに挑戦。
本種を追うのはもう疲れたと感じていたので、今回ダメだったら今後は諦めるつもり。
※1 生息地は他町村との境界線に近いので、札幌市のみ生息とは断定できない。
数年前、初冬に挑戦した沢。
前回、雪が深くて念入りに探せなかったので再探索。
この沢、春は増水、夏はイタドリやイラクサなどが生い茂り、立ち入ることが極めて困難。
大きな岩も遡上を阻む。
晩秋になると、水量は減り、草も枯れて、遡上が楽になる。
蚊やブヨもいない。肉体労働系探索なので多少寒い方が丁度いい。
樹上の葉も落ちるので、林床は明るくなり、見通しも良くなるため、ヒグマとのバッタリ遭遇確率も減少。
なので、この時期(晩秋~初冬)はガロアムシやメクラチビゴミムシなどの掘削系探索に最適といえる。
(まぁ、この時期ヒグマは冬眠前なので活発だけど)
しばらく遡上し、掘れそうな斜面を見つけたので、とりあえず礫層の状態を確認するために試し掘り。
昨晩から霧雨が降っていたため、普段の礫層内の乾湿具合が分からなかったが、湿った環境を好むコムシが複数出てきたので、常に湿度がありそう。
礫や岩盤の質は硬いが、適度に亀裂があり、それほど苦労せず掘ることができた。
礫層内は粘土が少々混じる程度で、メクラチビゴミムシが生息する環境に近いようだ。
ヨツアナミズギワゴミムシ Bembidion tetraporum
河原の石下などで見られ、地下浅層の表層付近でもよく見られる。
ここでも個体数は多かった。
体色は黒色で、深い場所にはいないが、体長から目的のゴミムシと似ているので紛らわしい。
40~50cmほど掘り進むと伏流水が僅かに染み出る岩盤にぶつかった。
ここまで掘るとヨツアナミズギワゴミムシやモリヒラタゴミムシの一種は出てこなくなる。
慎重に礫を崩しながら確認していくと、赤褐色の小型ゴミムシがひょこっと現れた。
もしや!と思ったが、周囲が暗くてよく分からない。
ヨツアナミズギワゴミムシのテネラル(羽化直後個体)だったら笑えないので、とりあえず持ち帰って確認することにした。
ムイネチビゴミムシ Epaphiopsis (Epaphiama) brevis rectilobata
明らかにヨツアナミズギワゴミムシとは異なった。
資料から数年間追い求めていたムイネチビゴミムシと同定。
体長は約4mm
体色はメクラチビゴミムシと同様、赤褐色。
複眼は小さく、完全に退化していない。
今回、同ポイントで4個体採集。思っていたより個体密度が高かったので驚いた。
まだ出てくる可能性は十分にあったが、これから天気が荒れる予報らしいので、打ち止めとした。
久し振りに満足いく成果となり、勉強となった。
もし次があるなら、確実に掘り出せそうだ。
おまけ↓
ドウナンヒラタクチキウマ(成虫♀)
礫層を掘った際に出てきた。
おそらく越冬のために潜り込んだのだろう。
産卵器下片の鋸歯数は通常4つ
同定の目安のひとつ。
北海道は今日から冬・・・っぽくなります。
飼育中の病死と事故死
長く飼育しているといろいろあるもので・・・
亜成虫から脱皮し成虫となったエゾガロアムシ♂(石狩山地産)
採集時は終齢で、「終齢→脱皮→亜成虫→脱皮→新成虫」といった経緯。
久々に完品の雄を得ることができたので、サンプル(液浸標本)にするのも良かったが、改めて交尾を撮影したかったので繁殖用に決定。(共食いするので繁殖はハイリスクな賭け)
雌の容器に移そうと、小石を取り除いていたら、手が滑って、虎の子の雄にクリティカルヒット(直撃)・・・
サンプル(液浸標本)になりましたとさ。
こちらはエゾガロアムシ♀(石狩山地産)
頭部や胸部、肢の各所が黒く壊死し、先日衰弱死してしまった。
細菌やウイルスなど感染症と思われ、長く飼育していると発症率が上がり、致死率も高い。
同じような症状ではバッタ類にも見られる。
飼育に限った事ではないが、成功の裏には多くの失敗の積み重ねがある。
しかもこれらの失敗は注意すれば避けられるものが多いので、実に効率悪いし、やりきれない。
雪だるまはじめました2014
あ~あ、とうとうこの時期が来てしまった・・・
まさか短時間でここまで積もるとは。
辺りの景色が一変。
というわけで、毎年恒例、初積雪での雪だるま作成。
今年はこんな感じ。
「ここは我々が食い止める!いまのうちに!!」といったFFにありがちな自己犠牲的シチュエーション。
連勤続きで、次の休みには探索行くぞと決めていたのに、やっときた休みの前夜にこのありさま。
たいへん興味深い情報を頂いたので、確認(というかまずは斥候的探索)しに行きたかったのだが・・・つくづく今シーズンは運がない。
今日は外出せずに家でお休み。次の休みに賭けてみるか。
少しでも山地の雪が融けるなら、強行じゃい!
わたしのワクワクを誰も止められない。
今回の写真は、無謀な探索の欲求を必死で食い止める今の精神状態を表現しております。
クモガタガガンボの活動について
先日、札幌に降った大雪は市街地ではほとんど融けてしまったが・・・
札幌でも郊外の山地へ行くと、たっぷり積もっており、すでに真冬状態。
深いところでは30cm以上の積雪で、歩くにはスノーシューがないとキツイ。
雪質はやや湿ったベタ雪状態。
この時期になると、見かける生物も激減するし、探索に出掛けるのも億劫になる。
自宅にこもりがちにあるが、少しは探索しないとストレスが溜まるので、たまには出掛ける。
クモガタガガンボの一種 Chionea sp.
複数活動していた。
この個体は雄で、今まで見たことがないくらい大型で驚かされた。
こちらは雌。
大型種と小型種の2タイプが見られ、おそらく別種ではないかと思われたが、容器に入れると交尾した。(交尾したからと言って同種とは限らないが・・・)
「クモガタガガンボは夜行性」という説があるが、わたしはこの説には疑問を感じている。
彼らが活動できる温度は+1.5~-6.5℃で、特に0℃くらいが適温のようだ。
これより低い気温になると、寒さに耐性のある彼らもさすがに凍死する。
今の時期(11月)、夜~明け方なら彼らの適温なので、活動するのは理解できる。
実際、今回の写真の個体を撮影したのは早朝6時で、おそらく夜間雪上で活動していたと思われる。(撮影場所の夜の気温は約0度)
しかし、真冬(12月中旬~2月)から夜間はそれを下回る気温となり、活動できる状態にはない。
この頃になると、晴れの日の気温が上がる午前10時あたりから活動し始め、夕方になると見かけなくなる。早朝や夜間にはまず見かけることはない。
このことからも、少なくとも北海道に生息するクモガタガガンボは適温なら昼夜関係なく活動するのではないかと考える。
要するに厳冬期に近づくにつれ、活動時間が夜間から日中に移行するという事。
厳しい環境、しかも活動気温が狭い範囲で活動する彼らは、効率良く「相手に出会い~交尾~産卵」しなくてはいけないのに、夜間のみ活動するのはリスクが高すぎる。
12月にはいなくなるフユシャクとは訳が違う。
実はもうひとつクモガタガガンボに関する説で疑問に思っていることがあり、只今調査中。
Yahoo!メールで一時的な問題が発生し、アクセスできません
「Yahoo!メールで一時的な問題が発生し、アクセスできません」
gooメールの無料版が終了してから、Yahoo!メールに乗り換えたのだが、頻繁に問題を起こしてくれる。
この記事を書いている現在もアクセスできない状態。
(どうやら今回はメンテナンス中らしいが・・・)
先日も問題があったばかり。実に杜撰な管理。
いくら無料とは言え、これはヒドイ。そろそろ堪忍袋の緒が切れそうだ。
というわけで、ここ数日のメールが届いていない可能性があります。
わたしは質問形式のメールを頂いた場合、なるべく返信するようにしております。
もしや?と思った方、再度メールを頂けると助かります。
この憤りは、探索で鬱憤ばらししたいところだが、なかなか時間が無く、そうはいかない。
ますますストレスが溜まりそうだ。
北海道のクモガタガガンボについての中途半端な詳細(改)
北海道に生息するクモガタガガンボは現在、チビクモガタガガンボChionea gracilistylaとニッポンクモガタガガンボChionea nipponicaの2種が分布していることになっている。
研究が不十分なため正確な種類数は不明であるが、個人的に3タイプあると思っている。
1つは、小型で雄の後腿節が肥大せず、雌の産卵管は長いタイプ(Aタイプ)
もう1つは、大型で雄の後腿節が大きく肥大し、雌の産卵管は長いタイプ(Bタイプ)
最後に雌の産卵器が短く、雄は不明なタイプ(Cタイプ)
数年前にも相違点からこれらが別種なのか個体変異なのかという内容の記事を載せたが、今回、新たに判明した事などを含め、内容を大きく変更することにした。
(前回の記事内容とは異なる点もあるので、混乱を避けるため前記事は削除しております)
本来、種の区別には雄の交尾器を調べるのが有力であるが、小さすぎる上、繊細なため、わたしには手に負えないという事を最初に述べておく。
<上面>左:Aタイプ♂ 右:Bタイプ♂
写真ではAタイプが約3mm、Bタイプが約6mmと明らかに体長が異なるが、実はそれぞれ体長にばらつきがあって、どちらのタイプか曖昧な個体もある。
また、体色は主にAタイプは黒褐色、Bタイプは黄褐色となっているが、黒褐色のBタイプもおり、飼育していると黒化する個体もいるので、体色に関しては決定的な違いではない。
把握器も大きな差はないように思われる。
<側面>上:Bタイプ♂ 下:Aタイプ♂
一見、体長、体色、後腿節以外は大きな違いがない。
こうなるとA・Bタイプは単なる体長の異なる個体変異である可能性が高くなるが、決めつけるのはまだ早い。
Aタイプ♂腹部拡大
第2~4腹節背面に前方に緩やかに突き出た凸状突起がある(白い矢印部分)
Bタイプ♂腹部拡大
肢には毛が密生しており、キウイフルーツのように肥大した後腿節に目がいってしまうが、それは後でじっくり見て頂いて構わないので、まずは腹節に注目してもらいたい。
大型なら特徴が顕著に現れるはずだが、なんとBタイプの腹節には突起が見られない。
痕跡すら見当たらないツルリン状態。(毛はあるけど)
この違いはかなり重要。
今まで気付かなかったのは恥ずかしい限り。
これでAタイプとBタイプが別種の可能性が高くなった。
AタイプがチビクモガタガガンボChionea gracilistylaでBタイプがニッポンクモガタガガンボChionea nipponicaということになりそうだが、この2種に関する詳しい文献がないため推測となる。
もちろん謎のCタイプを忘れてはいけない。
次回はCタイプが何者かという事を調べたいが、このタイプは個体数が少ないのか、なかなかお目にかからない。
ちなみにこれが過去に採集したCタイプ♀
暴風雪のち探索
今シーズン最後となるであろう(?)掘削系探索。
悪天候の予報ではあったが、今回の目的地は雪の少ない地域で、出発時の札幌も雲が無かったこともあり、楽観的に考えて出発。
しかし、現地に近づくにつれ、予想に反して積雪が深くなっており、木が倒れて道を半分塞いでいたり・・・危険臭がぷんぷん。
どうやら昨日の現地付近は、かなりの暴風雪だったらしい。
雲行きも怪しかったので、引き返し、雪の比較的少ない地域に移動することにした。
目的を果たすことはできなくなったが、手ぶらで帰りたくないので、エゾガロアムシの顔でも見ましょうかね。
過去によく訪れた沢
この場所は札幌からも近く、個体数も程々なのでサンプルを得るのに重宝している。
(しかし雄の割合がかなり低い)
うっすら雪が積もっているが、これくらいなら問題ない。
土中が凍結していなければ、この季節も十分掘れる。
(耐寒装備必須)
気温は-2℃。風が冷たく、体感温度はもっと低い気がした。
積雪で地面の様子が分からない斜面。
過去に掘った場所なので、ここに適度な礫層が・・・あった記憶がある。
一度掘った場所なので、大きな期待はできないけど。
掘り始めると、越冬中のゴミムシがわらわら出てくる。
主にモリヒラタゴミムシの一種やキノカワゴミムシなどのマルクビゴミムシの仲間。
左:エゾマルクビゴミムシ♂ 右:クロマルクビゴミムシ♀
最初、全てクロマルクビゴミムシで小型が雄、大型が雌かと思ったが、帰宅して前胸背部の縁毛や腹節の剛毛を調べると、小型はエゾマルクビゴミムシだった。
エゾガロアムシは幼虫4個体を確認。
成虫はなし。
確認した幼虫全て、暗色化していたので、脱皮が近い。
今年は諸事情によりガロアムシ探索数が激減してしまった。
久々に確認できてよかった。
※ もうご存知とは思いますが、喪中につき新年のご挨拶を失礼させていただきます。
北海道のクモガタガガンボ♀についての中途半端な詳細(改)
北海道に生息するクモガタガガンボは現在、チビクモガタガガンボChionea gracilistylaとニッポンクモガタガガンボChionea nipponicaの2種が分布・・・というのは前回の記事に記したので割愛。
前回は2タイプの雄について調べてみたが、今回は雌の違いについて調べてみた。
<上面>左:Aタイプ♀ 右:Bタイプ♀
雄同様、Aタイプが約3mm、Bタイプが約7mmと明らかに体長が異なる(産卵器を含まず)
が中間的な個体もおり、体色も主にAタイプは黒褐色、Bタイプは黄褐色となっているが、雄同様、体色に関しては個体差や変化がある。
そのため体長や体色の違いは決定的に区別できる要素とはいえない。
<側面>上:Bタイプ♀ 下:Aタイプ♀
大きな差が見られない。
もちろん、体長と体色以外ね。
Aタイプ♀腹部拡大
雄に確認できた第2~4腹節背板の凸状突起が確認できない。
強いて言えば、第4腹節背板に僅かに張り出している部分があるように見えなくもない程度。(白い矢印部分)
Bタイプ♀腹部拡大
各腹節背板前縁部に2ヶ所の窪みがあるが、これはAタイプにも確認できる。
要するに雄のような顕著な違いがない。
<産卵器>上:Bタイプ 下:Aタイプ
Aタイプの産卵器上弁はBタイプよりやや長く、上に反る。
Bタイプの産卵器上弁上部に小さな突起(黒い矢印)が見られた。
Aタイプには同様の突起がないと思ったが、写真のAタイプ産卵器は少し手前に傾いており、よく見たら同じ個所に小さな突起のようなものがある。
雌だと決定的な外見上の違いを見つけることはできなかった。