前回の続き
今回の目的は異なり落ち葉層や石の下に潜むある昆虫数種を探し出すこと。
これらはエゾガロアムシやメクラチビゴミムシとは近からず遠からずと言ったところか。
ムカシトンボの終齢幼虫 Epiophlebia superstes
沢脇の石の下で発見。
羽化が近くなると水中から出て、湿った落ち葉下などで1ヶ月ほど過ごす。
他のトンボとは、ちょっと変わった生態。
生きた化石は魅力的だが、今回の目的の昆虫ではない。
エゾガロアムシ幼虫 Galloisiana yezoensis
そういえば今シーズン初ガロアムシとなる個体。
ここの産地では既に出しているので目的にしていなかったが、偶然?石の下から発見。
ガロアムシ愛が一定レベルに達するとガロアムシの方からやって来るのである。・・・と、これからのガロアムシ探索のハードルを著しく上げてしまう身の程知らずな発言。(あ~恐ろしや)
メクラチビゴミムシの一種 Trechiama sp.
この子も目的ではない。
湿った落ち葉層の下という浅い場所から出てきた。
今回の目的のひとつであるヒダカチビゴミムシでないかと喜んだが、よく見ると似ているのは体色だけ。落胆。
この個体、今まで見てきた北海道産(夕張山地・日高山脈)の個体と比べて、頭部が少し大きく見える事が気になる。
アリヅカムシの一種
体長は3mm弱。ヒゲカタアリヅカムシだろうか?
湿った落ち葉層の下から発見したが、付近にアリの巣はなかった。
この子も目的でないが、実はアリヅカムシは初見。一度探し出してみたかった昆虫なので、偶然とはいえ嬉しい。
北海道に分布するアリヅカムシ種類数は極めて少ない。これは研究が進んでいないからなのだろうか?
アリヅカムシの一種の側面
ハネカクシに近縁で、特異な形をしている。
で、本題はこれからで・・・続く。
今シーズン初遠征(落ち葉探りの外道な面々)
今シ―ズン初遠征③(イレギュラー本命)
前回の続き。
場所を変え、標高を上げて探索。
標高400mくらいなので、山地ではあるが亜高山帯ではない。
探索した沢
前回探索した沢より谷幅が狭く、深くはない。沢脇の斜面は笹が多い。
所々雪が残っており、上流部は残雪で埋まっていた。
この場所で、落ち葉や石の下に潜んでいるであろう目的の昆虫を探すことにした。
間もなく、石の下から黒色の極小昆虫らしきものが現れた。
明らかに目的の昆虫ではないが、ふと昨年のある状況を思い出す。もしや!?
かなり慌ててしまったが、なんとか小瓶(フィルムケース)に捕獲成功。
あの新種(未記載種)であろう『無翅ハエ』が再び。
夏に前回採集した石狩山地の亜高山帯で探す予定だったが、まさか日高山脈にも生息しているとは。
こうなったら目的をこのハエに変更。(って結局当初の目的昆虫ってなに?)
極小で俊敏なため、いくつか取り逃がした個体もあったが、なんとか3個体のサンプルを採集することができた。(複数得られるとは驚き)
どうやらある環境に好んで生息しており、その場所を探せば大体見つけられる事が分かった。
またアリは付近にいなかったので好蟻性ではないと思われる。
今回、好みの環境(生態の一部)が分かった事は、大きな成果だ。
背面(日高山脈産)
特徴は無翅で体色は黒色。
俊敏で忙しなく歩き回り、危険が迫ると跳躍して逃げる。
体長は約1.3mmで、昨年採集した石狩山地産の約1.8mmと比べて明らかに小さい。
ただ体長以外の外見に違いは見られず、平均棍も同様に確認できない。
おそらく同種ではないか、同種なら地域変異でないかと思われる。
これはまた紛らわしくなってきた・・・
側面(2個体ともに日高山脈産)
昨年からこの無翅ハエについて調べてみたところ国内にはこのタイプの無翅ハエ報告例はないが、海外には酷似した種がいることが分かった。
Aptilotus paradoxusはヨーロッパに分布するフンコバエ科のハエで、体長は約2mmと石狩山地産と同じ。他の特徴、生息環境が記された内容とほぼ同じと言っていい。
日本にもAptilotus属が数種いる?らしいが、どれも翅はあるようで該当しない。
わたしが採集した2産地の個体もおそらくフンコバエ科の一種で新種(未記載種)ではないかと考えている。(わたしの調べた限りでは記載はなし)
貴兄はどう思われるか?
左が昨年採集した石狩山地産 右は今回採集した日高山脈産
並べて比べるとこんな感じ。やはり別種かな?
実は帰宅後に比較して初めて体長の差に気付いた。
今回の採集で、この無翅ハエの個体密度は低くないように感じた。
偶然は難しいが、探そうと思えば採集方法次第でいくらでも確認できると思われる。
生息場所が特殊とはいえ、何故今まで報告例がなかったのだろうか?
極小だからか?見つけても興味がなく報告しなかったか?それとも・・・?
見つけた時期と標高は、石狩山地産は8月で1000m以上の亜高山帯、日高山脈産は5月で500m以下と一見異なるが、実は雪解けして間もないところが共通している。
推測だが、成虫は雪解け後の限られた短い時期に発生するかもしれない。
この特異なハエは、もう少しわたしを楽しませてくれそうだ。
上手な吐き方
も~にゃ(我が家の飼い猫)が吐いた。
わたしのズボンの上に吐いた。
たんまりズボンの上に、はみ出さず吐いた。
(嘔吐物はモザイクをかけて自主規制させて頂きました)
ネコはしばしば吐く生き物なのでこれは仕方がない。
ズボンは洗ってしまえば問題ない。
絨毯の上に吐かれるよりは全然マシなので、むしろ今回の嘔吐はお手柄だ。
申し訳なさそうに、椅子の下に隠れるも~にゃ。
時期的探索不適地域
ニセコ五色温泉付近
通称:お花畑
道路はゲートが閉まっており通行止めなので、徒歩でアクセス。
まだまだ残雪多く、花どころか草の緑すらない。
「ふきのとう」がちらほらといった早春状態。
快晴で、雪の照り返しが眩しい。
沢の上を覆っていた雪渓を調子の乗って歩いていたら、崩壊してどぼ~ん!
これが増水した河川だったら・・・こわいこわい。
(もっとも増水した川ではそんなことしないけど)
沢脇の雪解けの進んだ場所
ここにも謎の無翅ハエがいないかと探してみたが、探せる場所が乏しく、出てくるのはアリばかり。
なぜここまでアリが多いのか分からないが、探索の支障となるのは間違いない。
他に見かけたのはクモ数種、極小ハネカクシ、陳腐なゴミムシ2種のみ。
ニセコチビゴミムシも生息している場所なので、もう少し雪が融けて暖かくなってから再挑戦してみよう。
リアルワールドちょこぼ
数年ぶりにニセコ町にあるダチョウ牧場を訪れ、ダチョウとふれあってみた。
今回のBGMはFFのチョコボのテーマを希望。
「第2有島牧場」
羊蹄山やニセコ山塊が見渡せる北海道らしい風景。
前回にはなかったグッズ販売の小屋があった。
餌やりができるが、ほとんど人には無関心。
近づいてくるのは数羽。
餌につられて近づいてきた友好的な(?)ダチョウたち。
勇気は要るが、直で手から餌を与えることもできる。
しばしば手をくちばしに挟まれるが、それほど痛くないし、これはこれで楽しい。
ちなみに糞はすごい勢いで噴出するので、必見だ。
笑ってます。
(実は餌を狙っている顔)
脚は爬虫類的。恐竜もこんな感じだったのだろうか。
足の裏は衝撃を和らげるためかクッションが効いており、歩くたびに「ぽふぽふ」と音が鳴る。
帰り道、本物(?)の恐竜を見つけた。
資料にはない種であったが、エゾサウルスの一種ではないかと思われる。
危険なので餌やりはできない。「桃太郎印のきびだんご」のみ有効。
(なんだよエゾサウルスって?)
イマイチおさむし
実家(旭川)帰りに少々寄り道探索。
旭川郊外・・・と言っても旭川市ではないが、数年前に見つけた良物件の側溝がある。
オオルリオサムシ(亜種名キタオオルリオサムシ)がなかなかの確率で入っているので、この時期に帰省する度、できるだけのぞいてみる事にしている。
おそらくトラップを仕掛ければウハウハかもしれないが、いつ回収行けるか分からないので、ギャンブル性の高い側溝探索を楽しむ。
コブスジアカガネオサムシ Carabus conciliator hokkaidensis
この子が現れた。
光沢が緑色や赤褐色などの色彩変異があり、オオルリオサムシにはとても及ばないが黒系オサムシと比べると美しい方だ。
個人的にはオオルリオサムシより見かける頻度が低い気がする。と言っても珍種ではないので人気はイマイチ。北海道固有種なのに人気はイマイチ。美しさもイマイチ。
オオルリオサムシがいなかった今回の側溝探索もイマイチ。
イマイチぞうむし
ふと早朝に某河川の河原で探索してみた。
河原にある湿地部分でミズギワゴミムシの一種を撮影することが目的。
しかし、風は強いわ、寒いわ。昨年の大雨の影響か湿地の泥部分に砂が覆われてしまって、湿った砂地になっているわ・・・
ミズギワゴミムシ生息環境壊滅という由々しき事態。
探索の意味がないというか寒さに負けて早々に帰ることにした。
流木下で見つけたゾウムシ。
複数見られたが、今までここでは見たことがなかった。
イネゾウムシに似ているが、ちょっと違う。
もしやキボシイネゾウモドキではと、持ち帰って調べてみることにした。
体長や後胸腹板の点刻などの特徴から・・・
クロイネゾウモドキ Notaris oryzae でした。
なんでい。
ショックで風邪ひいたわい!
解放
先日仕掛けたPTを回収しに道南へ。
狙いはもちろんエゾマイマイカブリ・・・んなわけない、オシマルリオサムシである。
毎年仕掛けているヒグマの出る林道。
高地でも低地でもない低山地にある。
今回は大盤振る舞いでカップ数100で挑んだ。
毎年これより少ないカップ数で落としているので、さぞかしウハウハだろう。
実はここで毎年落としているとはいえ、全て雄。なぜか雌が全然落ちない。
それで雌が落ちるまで意地になり、仕掛け続けてもう3年。
それほど良好ではないB級物件なので、さっさと雌を落として解放されたい。
この産地のオシマルリオサムシに貴重な探索時間を割きたくないのだ。
<結果>
まず仕掛けて4日後に確認。期間中雨天が多かった。
結果は見事に撃沈
大量のエゾマイマイカブリにイライラを感じつつ、リセットして次に期待。
そして7日後・・・またもや大量のエゾマイマイカブリ。ちょっと異常。
今までこのような事はなかったが、今年はエゾマイマイカブリの当たり年なのだろうか。
マイマイカブリが多いと同じ食性のオシマルリオサが駆逐され個体数が減少しないかと心配になる。もしかしてこれが原因?
まぁそれでも・・・
なんとか1個体落ちていたオシマルリオサムシ
くすんだ青色系で美しさに欠けるが、やっと雌を得ることができた。
それにしても100個仕掛けて1個体とは実に効率が悪い。
これが雄だったら泣きたくなる・・・
展足前
ここの産地は、美しい青色から緑色の光沢を持った個体が出る。
赤系は見かけない。
今回の成果で3年の戦いに終止符を打ち、ようやくこのポイントから解放された。
よってこのB級物件は放棄する。
KGG最終章①(目的と幼虫飼育経過)
一時休止していたクモガタガガンボの飼育を久々に開始することにした。
飼育目的は、成虫から卵を得て、幼虫、蛹、成虫と一連の過程を観察する事。
クモガタガガンボの生態解明調査は始めて以来数年間、中途半端状態が続いており、半ばやる気を失いつつあった。
毎年、いろいろ試し過ぎたり、飼育の詰めが甘かったりと、途中で失敗している。
まさに「角を矯めて牛を殺す」状態・・・
なので、今回は余計な事はしないようにしないように・・・
そろそろ結果を出さなければ。
※ 今回の記事にはウジムシ状の幼虫画像が満載なので、苦手な人は要注意であります。
<14年型クモガタガガンボ産卵用飼育容器>(通称:弁当箱 改Ⅱ)
過去の飼育経験からシンプルかつ効率的な内容。
産卵床として厳選した(?)「自家製腐葉土」・「落ち葉」・「湿らせたティッシュペーパー」を質素に盛り付けました。
この「自家製腐葉土」は、拾ってきた落ち葉を細かく砕き、水分を十分に加え、1年間じっくりと分解させたもの。
床材は産卵床にもなる「湿らせた厚手のキッチンペーパー」で、腐葉土の旨味(?)を吸収することで孵化した幼虫を飼育できる作りとなっております。
乾燥から守るために、上蓋としてラップで密封。
「要冷蔵」
主に産卵した場所は予想通り腐葉土内(白色矢印は卵)
クモガタガガンボを産卵させることは難しくはない。
彼女らの機嫌が良ければ、産卵シーンだって十分に観察や撮影もできるレベルでサービスしてくれるのが嬉しいところ。
<孵化間もない幼虫>
昨年12月中旬から次々と孵化し始めた。
体長は約1.5mm 蛆虫状で頭部は黒い。
見た目のイメージに反して活発に動き回る。
産卵した卵は冷蔵庫(約8~10℃)で保管し、25日程度の卵期。
自然下と同条件で0℃付近のクーリングを一定期間しなくても孵化はする。
もちろん自然下では卵で厳冬期を越えなくてはならないので、卵期は3~5ヶ月だろう。
(成虫はある程度の耐寒能力があるが、幼虫は氷点下近くなると寒さを避けるように動き回り、氷点下になると凍結して死ぬ)
写真の幼虫は、体内に食べた内容物が確認できるので、しっかりと腐葉土を食べているようだ。
<5mmほどに成長した幼虫群>
ただ、最も彼らが好むものは、腐葉土の養分が染み込み、更に微生物により分解され泥状になったキッチンペーパーで、そのような場所に幼虫は集まり、潜り込む。
キッチンペーパーは分解されてはいるが、アンモニアや生ゴミのような腐敗臭は一切しない。
経験上、腐敗臭が発生したり、カビが発生する環境では、幼虫は死滅してしまうので、ウジムシの割には環境に気を遣う。
実は腐葉土のみだと幼虫が順調に成長するとは言えず、この床材として使用している厚手のキッチンペーパーを適度に分解させることが幼虫飼育の鍵だと言っても過言ではない。
(泥状ということで、水に溶いたトイレットペーパーと腐葉土を混合したものの使用を試みたが、分解不十分だったのか失敗した。これはもう少し改良の余地ありだが、今回は深入りしない。)
※ 写真のキッチンペーパーは分解途中でまだ原型を保って綺麗な状態だが、もっと変色し半ペースト状になったものを好む。
幼虫の生育状況、腐敗状況や乾燥状況を毎日確認。
幼虫数が多いので、飼育容器を2つに分けることにした。
あとは蛹になるまで気長に待ちます。
ちなみに待つことは嫌いです。
幼虫をここまでのサイズに育てることは、過去の飼育でも成功しているので比較的容易。
問題はここから。蛹化に至るまでが一筋縄にはいかない。
②に続く
KGG最終章②(蛹化の要因・結果と考察)
「クモガタガガンボは野ネズミのトンネル(巣穴)内に産卵する」という説がある。
論文などにもあるので実際そうらしい。
それならば、幼虫が成長するための必要な要因があり、野ネズミの巣穴に依存しなければならないのか?
これまでの飼育結果から、幼虫が成長できるのに適した環境は、多湿でややペースト状に分解された腐葉土。
確かに幼虫は乾燥に弱いので、多湿なトンネル内部は最適だが、これは野ネズミのトンネル内特有の環境ではない。
森林内の腐葉土層では普通に見られるであろう環境。
幼虫の餌として適した腐葉土もトンネル内のみにある物でもない。
しかし、今までの飼育方法では幼虫は10mm程までは順調に成長するが、徐々に5mm程に縮まり、不活発となり、蛹化には至らない。(幼虫は伸縮性のある体なので、体長自体が変化するわけではない)
休眠状態の可能性もあるが、数も徐々に減少していくので、何か原因があるかもしれない。
例えば、野ネズミの糞、または糞由来の菌類などを食べることで蛹化に至るとか・・・
温度変化が蛹化の要因となる可能性もある。
そこで、クモガタガガンボの蛹化要因を探るべく、いろいろと試してみた。
<試験飼育①:温度の差による実験>
疑似的に秋(低温)を再現し、温度で蛹化が促進されるのか確認。
最初に幼虫を室温(15~20℃)で4ヶ月飼育し、その後10℃以下に設定した冷蔵庫へ移動。
餌は自家製腐葉土で、定期的に植物の葉を入れ腐敗させて餌の補填をする。
幼虫は既に成長が止まり、5mm程に縮まっている不活発な個体を使用。
比較対照として約15℃を維持した環境(他は同環境)で飼育していく。
※ 温度管理が氷点下付近であるため調整が難しく、誤って冷やし過ぎると幼虫を凍死させてしまう事と、1ヶ月続けて変化が見られなかったため、温度差による蛹化促進は見られないと判断し、約15℃を維持した環境へ戻して終了。
<試験飼育②:餌の違いによる実験>
野ネズミの糞に依存しているのかの確認。
野ネズミに依存していないことを証明したいので、本心はこれで蛹化して欲しくない。
これはアカネズミの巣穴付近から採取したアカネズミ(もしくはヒメネズミ)の糞
なるべく新鮮なものを選択。小さなハネカクシなどの虫が混入していたため速やかに取り除いたが、この後、カビが発生されると厄介なので安心できない。
(変な寄生虫とかいないか、こちらの方がもっと心配なのだが・・・)
この糞を腐葉土に混ぜて使用。気温は約15℃を維持。
比較対照として腐葉土のみを餌として飼育していく。
<結果>
5月31日に一部の幼虫の体色が全体的に真っ白に変化。
翌日の6月1日、アカネズミ糞を餌にしていた幼虫と腐葉土&腐敗植物を餌にしていた幼虫が同日に蛹化。
クモガタガガンボを飼育下で蛹化させた例はわたしの知る限りない。
おそらく初の報告例となる。
アカネズミ糞を餌にしていた幼虫が蛹化
腐葉土と腐敗植物を餌にしていた幼虫が蛹化
幼虫期間は約6ヶ月。
体長は約4mm 体色は白色で複眼部分は黒色。
体は柔らかく、乾燥に弱い。光を当てると反応して動く。
<考察>
今回の飼育結果から、幼虫は「腐敗植物を含んだ腐葉土」と「アカネズミの糞」のどちらで飼育しても蛹化することが分かり、野ネズミに依存しなくてもよい事が考えられる。
これはわたしの想像通りとなった。
かと言って、野ネズミの巣内に産卵することに意味がない訳ではない。
野ネズミのトンネル内には幼虫の成長に適した環境があるが、基本は林床に産卵し、そこで腐葉土などの腐敗植物を食べて成長する。
雪で覆われた場所では野ネズミの巣が地面と直結した場所にもなるので、巣穴が見つかれば格好の産卵場所となるということだろう。
5年かけてやっと蛹化に成功できた。
今までいろいろな生き物を飼育してきたが、クモガタガガンボの蛹化は情報がない状態から始めたので難易度が高かった。
達成感と解放感に満たされる今日この頃。
これだから生物の生態解明は面白い。
あとは羽化までの期間を調べ、クモガタガガンボ生態解明は終了とする。
湿地を歩く、ひたすら歩く
ある目的で湿地を徘徊。
今まで水生生物やオサ掘りで何回も訪れている場所だが、今回は別の目的だったので徘徊的探索は新鮮だった。
今年は湿地性のセスジアカガネオサムシが当たり年なのか、歩き回っている個体を複数確認。
ハッカハムシ成虫 Chrysolina exanthematica
晩秋のオサ掘りで土中や朽木中から越冬個体を出していたので生息しているのは知っていた。
ハッカ類に集まるハムシだが、この植物が何かは分からない。
葉のにおいを嗅いで確認してみたが、独特の香りはなかった。
こちらはハッカハムシ幼虫
このハッカ類と思われる植物になかなかの確率で幼虫か成虫がいたが、付いているのは1株に1個体のみだった。
途中、エゾシカの死骸を発見。
と言っても肉や骨はなく、毛の塊のみだった。
コブスジコガネ類いるかも・・・とあまり期待しないで探してみた。
ヘリトゲコブスジコガネ Trox mandli
3個体確認できたが、毛の下の地面は探していないので、もっといたかもしれない。
おそらく本種はコブスジコガネ類の中では採集難易度が低いのではないだろうか。
別の種類を見つけたいが、そんな都合よく死骸や糞、ペリットは見つからない。
イチモンジチョウ幼虫 Limenitis camilla japonica
北海道亜種らしい。
ハスカップ(クロミノウグイスカグラ)の葉上で見つけた。
幼虫はスイカズラ属の葉を食べる。
という事はハスカップはスイカズラ属なんだ~勉強になったよ。
もっと探索したかったが、途中で水分補給用のドリンクが無くなり、目的を達すること叶わず断念。
それでもなかなか楽しめた。
雪渓を目指す
今回は日高山脈のある山で登山的探索。
道なき道をひたすら沢伝いに遡上。
エゾシカのものと思われるけもの道を歩き、深い藪をかき分け、流木の山を越え、大きな岩をよじ登り、ヒグマの存在に怯えながら・・・
到着した雪渓が残る地点
途中何度も引き返そうと思ったが、何か面白いものがあるはずと鼓舞しながら必死に遡上。
ここに到着した時は、帰りの体力残っていないくらい疲労困憊。
薬草とポーションを飲んで、少し体力回復させて探索開始。(回復魔法は使えません)
この雪渓付近にある石の下を物色してみることにした。
さぞかし興味深い高山性の生き物がウハウハ見られるだろう。
※ この場所は標高から亜高山帯
ルリマルクビゴミムシ(日高山脈亜種) Nebria shibanaii sakagutii
石の下から出てきたこの子の光沢の美しさに驚いた。
頭部と前胸背部は青緑色の光沢、上翅は藍色の強い光沢・・・某産地のオオルリオサムシの体色を彷彿させると言っても過言ではないだろう。
原亜種である石狩山地産の弱い青緑色の光沢とは雲泥の差。
こんなの石の下からひょこっと出てきたらテンション上がりますよ。
ただ、原色日本甲虫図鑑によると日高山脈亜種は光沢が赤紫色とあった。
疑問に思いつつ、帰宅して新たに撮影してみると・・・
左:♂ 右:♀
おや?見事に赤紫色の光沢。現地での撮影は朝の青空が反射したのか?
まぁイメージは変わるが、美しいから別に気にしません。
体長も原亜種よりやや大型。
雪渓付近の石下で複数見かける事ができたが、それよりも下流域の石下では全く見かけなかった。
夕張山地産は原亜種と同じ光沢だったので、日高山脈産も北部にいく(石狩山地や夕張山地に近づく)につれ光沢が弱くなり、小型傾向になるのだろうか?
機会があったら確かめてみよう。
メクラチビゴミムシの一種 Trechiama sp.
石の下から♀2個体得られた。
左の体長は5.5mm、右は4mm
明らかに体長差があるが、異種か同種なのかは分からない。おそらく誰も明確な事は言えないだろう。
メクラチビゴミムシはこれが面倒で、深くのめり込めない原因。
個人的にはガロアムシ探索の外道であるが、興味は捨てきれない。
アラメニセマグソコガネ北海道亜種 Psammoporus nakanei horii
これも石の下から得られた。
体長は4mmほど
弱い光沢、肩歯あり、後角が斜めに裁断状に弱く湾入する、間室はかるく膨隆するなどの特徴から本種と同定した。
このタイプのマグソコガネ類は小型な上に似たものが多くて紛らわしい。
過去に同定を諦めた個体もちらほら・・・
アラメニセマグソコガネ側面
エゾガロアムシは今回の目的ではなかったが、石の下から幼虫1個体得られた。
そろそろエゾガロアムシ分布域調査に取り掛からなくては。
ただし今回の探索地は体力的にキツイ度最大級なので2度と行かないだろう。
嵐のあと
気になる事があったので、早朝に某河川の河口へ。
某河川の河口
何てことはない環境。どこの河口でも見られる環境。
だが・・・
昨年の大雨は、道内各地で被害が発生。
この河岸も増水で大規模に洗い流され、大量の流木で溢れていた。
一部泥の湿地だった場所は全部砂地に埋まってしまった。
今まで生息していた海浜性(?)生物はどうなってしまっただろうか。
無心になって大量の流木をはぐり確認。
ほとんどの流木下はハマトビムシの一種に占拠。
オオハサミムシ Labidura riparia japonica
減少
ハマベハサミムシ Anisolabis maritima
減少
カラフトヒメヒョウタンゴミムシ Clivina fossor sachalinica
増加
なんで?
シラフヒョウタンゾウムシかスナムグリヒョウタンゴミムシ
減少
あんなにいたのに・・・
キベリマルヒサゴコメツキ Hypolithus littoralis convexus
減少
2時間も探して3個体のみ。
普通種だった昆虫がことごとく減少しているといった由々しき事態。
回復するまで何年かかるだろうか?
生き物は我々が考えているよりも生命力が強い。もしかすると来年にはすっかり回復しているかもしれない。それならいい。
人もクモも先ずは第一印象
見たことのないクモを河原で見つけた。
あまりクモに興味のない私だが、腹部の斑紋が特徴的で可愛かったので思わず撮影。
帰宅して何者か調べてみた。
マユミテオノグモ Callilepis nocturna
日本では北海道のみ分布する巣を張らない徘徊性のクモ。
(国外の分布に関しては不明)
そんなに珍度は高くないらしいが、もう少しいろいろな角度から撮影しておけば良かったかな。
側溝エクスプローラー15’初夏
側溝探索・・・それはローリスク、ローリターンな探索。
オオルリオサムシに関して言えば、ひとつの側溝に2~3個体入り込んでいれば大収穫。
側溝エクスプローラーたる者、欲を出してはいけないのである。(ホントに?)
実家(旭川市)帰りに立ち寄った側溝IBT
何回か訪れているが、思いのほか、落ちていない側溝。
でも餌となるヒメマイマイやエゾマイマイなどのカタツムリの個体数は多い。
亜種名キタオオルリオサムシ Damaster gehinii aereicollis
今回は雄が1個体のみおりました。ちーーーん。
他のオサムシは0
あとは・・・
アカガネアオゴミムシ Chlaenius abstersus
なかなか側溝では見かけないが、落ちている側溝では個体数が多い。
比較的乾燥した環境を好むので、そういった環境付近の側溝を探索しないからあまり見かけないのだろう。
落ちていたのがペアだったので、珍ではないのに思わず採集。
いかに成果に乏しい側溝ということがこのことからも分かる。
あとは、マダニの付着1
側溝探索・・・それは牧歌的探索。
Red princess +毛
ある川の河口付近を探索していた時の話。
流木下にカタツムリを発見
こんなところにヒメマイマイかぁ・・・と手に取って確認してみると。
なんと殻が赤い!
厳密に言うと、「小豆色」というか「葡萄色(えびいろ)」だが赤系なのは間違いなく、このような殻の色は今まで見たことがない。
しかも・・・
有毛!!(かなり短いので注意)
うひょ~!これは更に珍!!
軟体もなんとなく赤みを帯びている。
殻も淡く赤いかもしれないが、主に軟体の色が透けているのだろう。
この個体を見つけた河原では複数同様の個体を確認できたので偶然ではなさそう。
更に17kmほど上流の河川敷でも赤系を確認。
ただ7kmほど内陸にある林内で見つけたヒメマイマイは普通のタイプであったので、川沿いにかなり長く分布していると考えられる。(どこまで上流域まで分布しているかは不明だがこのくらいが限界だろうか)
このタイプを「赤ヒメ」と名付けよう。
KGG最終章③(蛹の形態)
先日、蛹化に成功したクモガタガガンボ。
次々蛹化して、蛹は4個体まで増えた。
この時点で蛹化は偶然でないだろう。
クモガタガガンボの一種の蛹
この蛹の腹部末端が尖っている。これは成虫になったときに産卵器となる部分。
ということはこの蛹は雌。
雌として蛹化したのは今回が初。
前回の蛹はこれ↓
前回の蛹(写真上)には同様の突起はなかったので雄ということになる。
腹部末端が縦に割れているので、成虫になったとき把握器になる部分。
ガガンボ全般がそうなのか分からないが、クモガタガガンボに関しては蛹の時点で性別が分かるようだ。
愛情込めて飼育すると期待に応えてくれるとは断言できないが、成果が得られると親バカ的に嬉しくなるし、産卵からここまで成長させたことで情も湧く。
今回の子は箱入り娘だ。大切にアルコール標本・・・っておい!
6月PT結果
今月もそれぞれの目的のため各地へ遠征探索しており、そのついでに期待できそうな良好物件(仮)を見つけると少量ながらPTを仕掛けてみた。
闇雲に仕掛けると、回収で無駄な時間(仕掛けた場所までの移動時間)を浪費するので、ほどほどにしたつもり。
回収自体もそれなりにドキドキ感があって面白いけど、それより最優先目的が多々ある時期なので、できれば信頼できる虫屋以外の人に回収を依頼したいところ。
もちろん無報酬で。(おいおい・・・)
で成果は・・・
ヒメオオルリオサムシ♀ Damaster gehinii manoianus
日高町産
今まで青系ばかりで、この体色は初で嬉しいはずだが、個人的に陳腐な体色と感じているためか、いまいちテンションが上がらない。
ここの産地は本亜種東限付近であり、他亜種の分布域と接するので本当にヒメオオルリオサムシとしていいものか疑問だ。
確かに体長は小さい、今まで確認してきたどの産地よりも小さいが・・・
オオルリオサムシはいくつかの亜種に分かれているが、亜種間の分布域はほとんど隔離されていないので交雑地域もあり、本当に亜種にしていいの?って個人的には思う。
亜種というのは曖昧なもの。
ただ亜種にすると箔がつく(?)ので、コレクターは血眼になって採集することになる。
なんとも滑稽だが、わたしもそれに踊らされている。
これは上の写真の個体♀
太陽光下では赤銅色していた個体が電灯下で撮影すると緑色がかってしまい、全く別の個体に見えてしまう。光沢のある昆虫を撮影するとよくある事なんだけど・・・
つぎは・・・
アラメオオルリオサムシ♂ Damaster gehinii radiatocostatus
広尾町産
日高山脈南東部産なので、典型的なタイプと言いたいところだが・・・
本亜種の分布域は曖昧なので、典型的な産地で得られたことは個人的に安心する。
体長はやや小型で27mm。小さかったので最初ヒダカキンでないかと思った。
体色は地味で、前胸背部は赤銅色、上翅は金銅色。
今まで見てきた他産地個体では見たことのない体色。強いて言えば札幌産の体色を暗くした感じ。
アラメオオルリオサムシの上翅
間室の隆起が条線間を繋げるほど顕著で粗い。
拡大するとちょっと気持ち悪い。
コブスジアカガネオサムシ♂ Carabus conciliator hokkaidensis
こちらも広尾産
ここまで全体的に緑色の強い光沢がある個体は初めて。アオオサムシっぽい。
(太陽光下だともっと輝いていた)
仕掛けたポイントはこのタイプが多く、回収時の確認でその強い光沢からオオルリオサが入っているかと勘違いするくらい美しかった。もちろんその後の落胆は激しい。
いろいろあってPT回収が延期され設置期間が2週間となってしまった。
春ならともかく、この時期に2週間も設置(雨天が数日あった)すると腐敗臭が半端ない。モンシデムシ類を誘発してしまうと、もう惨事だ。
帰宅すると台所の排水溝から同じ臭いがしてきたのでテンション下がった。
見えそうで見えない繋がり
ある目的があって日高山脈北部のある山に登り、標高1000~1500m辺りで探索。
本命については後日記すとして、今回は興味深かった副産物。
ルリマルクビゴミムシ
左が主に石狩山地(大雪山系)に分布する基亜種Nebria shibanaii shibanaiiで、右がヒダカマルクビゴミムシと呼ばれる日高山脈亜種Nebria shibanaii sakagutii
日高山脈北部では両亜種が混生しているらしい。(写真はどちらも日高山脈産)
圧倒的に日高山脈亜種の個体数が多かったが、亜種同士が混生しているとは驚いた。
写真では体長は変わらないように見えるが、全体的に日高山脈亜種の方が大型となる。
夕張山地でも基亜種タイプを確認しているので、北見山地でも生息しているのではと考えている。予想としては北見山地は基亜種タイプか?
ダイセツヌレチゴミムシ Minypatrobus darlingtoni
石狩山地(大雪山系)に分布するが、日高山脈でも確認。
以前、夕張山地(芦別市と夕張市)と北見山地で確認しているので、日高山脈にも生息していると思っていたが想像通りだった。
記載産地である石狩山地(大雪山系)では個体密度が高いが、それ以外はなかなかお目にかかれない。
キタツヤシデムシ Pteroloma forstroemi
石狩山地(大雪山系)に分布するが、以前に北見山地で確認している。
今回、日高山脈でも確認したが、これは想定内。
ということは、夕張山地でも生息している可能性があるが、未だ出せていない。
左は石狩山地産 右は日高山脈産
日高山脈産の方が体長がやや大きい。北見山地産も同様に大型であった。
極端に差があるわけではないが。
北見山地・石狩山地・夕張山地・日高山脈の4山地は、地理的隔離しているとは言えず、むしろ接していると言えるので、余程特殊でない限り、生物がこの範囲で広く分布している可能性はあるだろう。という予想。
こういう事って、各地で探索しないと予想はできても証明はできないね。
頑張ろうっと。
非珍でも魅力あり
目的外の外道だけど、ちょっぴり気になった小型ゴミムシにスポットライト。
アシグロチビヒョウタンゴミムシ Dyschirius tristis
体長約3mm
干潟の石の下から発見。
小さいので目視ではなんとなくヒョウタンゴミムシの仲間と分かるくらいだった。
帰宅してカメラで拡大撮影してやっとこんな形なんだと把握でき、その特徴から同定できた。
強い黒色の光沢、腰のくびれ具合・・・セクシー
キイロヒラタチビゴミムシ Trechus ephippiatus
体長4mmほど。
河原の流木下から発見。
チビゴミムシの仲間のくせに北海道~九州まで幅広く分布する非珍なゴミムシだ。
チビゴミムシたるもの狭い限られた地域でのみ分布すべきと偏見的な見方をする私であるが、この子の特徴を把握しておけば、北海道に分布する本種以外のキイロチビゴミムシ亜属を区別する手ががりとなるので、個人的には重要なサンプルとなってくれるものだと信じている。
まぁよく見ると、琥珀のような透き通った光沢があって、美しく感じるではありませんか。