前回の続き。
場所を変え、標高を上げて探索。
標高400mくらいなので、山地ではあるが亜高山帯ではない。
探索した沢
前回探索した沢より谷幅が狭く、深くはない。沢脇の斜面は笹が多い。
所々雪が残っており、上流部は残雪で埋まっていた。
この場所で、落ち葉や石の下に潜んでいるであろう目的の昆虫を探すことにした。
間もなく、石の下から黒色の極小昆虫らしきものが現れた。
明らかに目的の昆虫ではないが、ふと昨年のある状況を思い出す。もしや!?
かなり慌ててしまったが、なんとか小瓶(フィルムケース)に捕獲成功。
あの新種(未記載種)であろう『無翅ハエ』が再び。
夏に前回採集した石狩山地の亜高山帯で探す予定だったが、まさか日高山脈にも生息しているとは。
こうなったら目的をこのハエに変更。(って結局当初の目的昆虫ってなに?)
極小で俊敏なため、いくつか取り逃がした個体もあったが、なんとか3個体のサンプルを採集することができた。(複数得られるとは驚き)
どうやらある環境に好んで生息しており、その場所を探せば大体見つけられる事が分かった。
またアリは付近にいなかったので好蟻性ではないと思われる。
今回、好みの環境(生態の一部)が分かった事は、大きな成果だ。
背面(日高山脈産)
特徴は無翅で体色は黒色。
俊敏で忙しなく歩き回り、危険が迫ると跳躍して逃げる。
体長は約1.3mmで、昨年採集した石狩山地産の約1.8mmと比べて明らかに小さい。
ただ体長以外の外見に違いは見られず、平均棍も同様に確認できない。
おそらく同種ではないか、同種なら地域変異でないかと思われる。
これはまた紛らわしくなってきた・・・
側面(2個体ともに日高山脈産)
昨年からこの無翅ハエについて調べてみたところ国内にはこのタイプの無翅ハエ報告例はないが、海外には酷似した種がいることが分かった。
Aptilotus paradoxusはヨーロッパに分布するフンコバエ科のハエで、体長は約2mmと石狩山地産と同じ。他の特徴、生息環境が記された内容とほぼ同じと言っていい。
日本にもAptilotus属が数種いる?らしいが、どれも翅はあるようで該当しない。
わたしが採集した2産地の個体もおそらくフンコバエ科の一種で新種(未記載種)ではないかと考えている。(わたしの調べた限りでは記載はなし)
貴兄はどう思われるか?
左が昨年採集した石狩山地産 右は今回採集した日高山脈産
並べて比べるとこんな感じ。やはり別種かな?
実は帰宅後に比較して初めて体長の差に気付いた。
今回の採集で、この無翅ハエの個体密度は低くないように感じた。
偶然は難しいが、探そうと思えば採集方法次第でいくらでも確認できると思われる。
生息場所が特殊とはいえ、何故今まで報告例がなかったのだろうか?
極小だからか?見つけても興味がなく報告しなかったか?それとも・・・?
見つけた時期と標高は、石狩山地産は8月で1000m以上の亜高山帯、日高山脈産は5月で500m以下と一見異なるが、実は雪解けして間もないところが共通している。
推測だが、成虫は雪解け後の限られた短い時期に発生するかもしれない。
この特異なハエは、もう少しわたしを楽しませてくれそうだ。
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今シ―ズン初遠征③(イレギュラー本命)
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