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Channel: 探索・採集・飼育みたいな雑記的記録
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札幌のセッケイカワゲラ

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先日、札幌市南部の丘陵地で探索した際に見つけたセッケイカワゲラ類を含むクロカワゲラ科を数種採集して詳しく調べてみた。
カワゲラに関する資料が乏しいので、種同定まで出来ないところが歯痒いが、できる限りのことはやったつもり。

<クロカワゲラA>←なんかスタミナドリンクの商品名みたい。


これは沢付近の雪上で一番多く確認できたクロカワゲラの一種。
体長:♂6mm ♀7mm

雄の腹部側面
肛上板基部(腹部先端の反り返った部分)に柄がない。


中胸腹板刺状板に長い腕状節片を持つ。(矢印部)
この「雄の肛上板」と「中胸腹板の刺状板」の形状は一部のカワゲラ類を区別する目安のひとつなので、留意して以下の数種を比較してみる。

<クロカワゲラB>

見つけたのは雌の1個体のみ。(触角は欠損)
体長:♀9.5mm(左:上面 右:下面)
Aと比較して尾肢が長く、前胸背板の形が明らかに異なるので、別種であるのは間違いないが、クロカワゲラ科に属するのかも怪しい。
「中胸腹板刺状板にある腕状節片」については体色が暗すぎてよく分からず断念。

<クロカワゲラC>

翅が極めて短いタイプで個体数は少なかった。
翅の長さがAの半分程の個体は別の場所でよく見かけるが、採集地では全く見かけなかった。
体長:♂5.5mm

雄の腹部側面
肛上板(腹部先端の反り返った部分)はAよりも太く短い。柄は極めて短い。
腹部第7背板には明瞭な刺状突起があることから、明らかにAとは異なる。


中胸腹板刺状板の腕状節片は不明瞭ではあるが確認できる。
当初、CはAの短翅型か不完全羽化個体ではないかと思っていたが、特徴が異なることから別種であることが分かった。セッケイカワゲラ類に近いか?
想定外の結果に驚き半分、嬉しさ半分。
ただし、翅の長さがAの半分程の個体はここでは見つからなかったため、それが別種であるかは不明。

<セッケイカワゲラ類 Eocapnia属>

こちらは雄
体長:♂6.0〜7.0mm


こちらは雌
体長:♀7.5〜9.5mm
左と中央の個体は腹部背板第1〜8節が2分割されているが、右個体の腹部背板は第2〜8節が2分割されている。
分割の状態が同定のポイントになっているが、曖昧な個体も多いので決定的特徴とは言えない。



雄の腹部側面
肛上板に柄がないか極めて短い。
エゾユキクロカワゲラの肛上板は柄がとても長いのが特徴なので、この個体は該当しない。


中胸腹板刺状板に腕状節片を持たない。(もしくは不明瞭?)
体色が暗いので明確に判別ができなかったが、明瞭な腕状節片は持たないようだ。

北海道のセッケイカワゲラ類はエゾユキクロカワゲラEocapnia yezoensisと未記載種2種の計3種が分布している。
これら3種は近似しており区別は難しいが、今回採集した個体は、エゾユキクロカワゲラではなく、未記載種のひとつの特徴に近い。
Eocapnia sp.としておこう。


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